見事に、振られました。

「寒い!」

「あれ、マフラーは?」


 タケが聞いてきた。


「いらない。タケにあげた」

「いらない」

「ぶーぶー」

「かわいくない」


 カンカンと音を立てる階段。

 冬になんだかよく似合う。


「マフラーね」


 並んだタケは私よりも高い。

 いつの間にか抜かされた身長。

 大人になっていく。


「彼の唯一のわがままなんだよ」

 駄々っ子の私が、ガキな私が、大人な彼の『してほしい』を叶えた唯一のもの。


「私には似合わなかったけどね」


 上っていく白い息。

 はぁと意味もなく息を吐く。