君の名は灰かぶり



少女は、何のためらいもなく

その男に躰を預けると、


男は慣れた手付きで

ヒョイと少女を担ぎ上げて

エレベーターの脇にある階段を


素早く駆け下りた。


──…この人は、誰だろう。


少女は、その疑問を抱えながら男の腕に不思議な安寧を感じていた。


男は、黒塗りのフェラーリを開いて

後部座席に少女を放り込むと

ドアを閉めて自分は、


運転席に座って素早くエンジンを掛けた。