この男にしたってそうだ。
この男は、何者なんだ?
どうしてボクを知っている?
それに、どうして
ボクはこの男を知っているんだ?
少女を改めサクヤは、
懇々と湧き上がる謎に頭を悩ませた。
そうしているうちに
やってきた急ブレーキにサクヤは、
ゴツンッと鈍い音をたてて
運転座席の後ろに頭をぶつけた。
「〜っ、」と頭を抑えて苦しむサクヤに
男は、「あぁ、悪い」とだけ言って
「降りろ」とドアを開けた。
サクヤは、涙目で男を睨み付けながら
仕方なく言うとおりに脚を降ろした。
すると、男は顔をしかめて
「お前…、服に付いた血くらいどうにか出来なかったのか」
と血がついた後部座席を愕然と見つめた。

