スゥーッと立ち上がった。


「いいよ、あたし一人で帰れるから」


「先生に見つかるぞ、もう消灯時間過ぎてんだから」


そうだけど……。 帰りに一人になった時に見つかったら、いっくんだけが怒られるんだよ。


「そう思うなら、消灯ギリギリに来るなよ。 話があるなら、ロビーに呼んだら行ってやったのに」


「だってー……」


人に聞かれたくなかったんだもん。


ロビーだったら人に見られそうで嫌だった。


「ほら、行くぞ。 “声を出さずに”来いよ」


スタスタといっくんは歩き出してしまった。


「あっ、ちょっと待って」


眠っている陽太くんに近付いた。


一応、ね……。 壁に顔を向けているから、寝顔は見えないけど。


「陽太くん、ゴメンッッ」


布団の端を持って、肩まで持上げた。


肩が出ていたら寒いからね。 風邪を引かないように……。