「あっそうだ。 前田くん」


いっくんがいるんだ。


「なんだよっ」


「まおなんだけど、ちょっと目を離した隙にどこか動いて“迷子”になりそうなんだけど」



うわー、優ちゃん!
どうしてそんな事を“いっくん”に話しちゃうの。


『いっくんに話す = 怒られる』


こんな方程式が成り立つんだよ!



「まおー、お前はこんなとこまで来て“迷子”になりたいのか?」


なりたくないよ! なりたくない!


首を大きく横に振る。



「だったら気を付けな。 探す方は大変なんだからな」


「はーい」


修学旅行 第一日目。
さっそくいっくんに怒られた。



「まおはさっき携帯で何を撮っていたの?」


「んーっとねー、これ!」


携帯を取り出して、さっき撮った海と空を優ちゃんたちに見せた。


いっくんは……
興味が無いのか外を眺めていて、一切こっちを見てくれない。


あとで“見せて”って言ったって、見せてあげないんだからねっ!