小松崎は呆れた顔で徹也を諭すように静かな口調で語りだした。

「将来、やりたい事が出てきた時に高校を卒業してることが必要かもしれないだろ?」

「将来への保険ですか?」

「そういう捉え方もできるな。」

「僕には、将来のことよりも、今をどう生きるかが大事なんです。」

「そう思うのは今だけだ。将来を見据えて考えなさい。もっと現実を見なさい。」

ただ一つ言えることは、私はこんな大人にはなりたくないってこと。

大人になったらわからないこと。

忘れてしまうこと。

夢をみること、無限に広がる希望に想像を膨らませること。

「先生、いま幸せですか?」

「ん?どうかな。家族もいるし、幸せだと思うけどな。」

徹也は立ち上がり教室の扉を開け、振り返った。

「自分にとって、何が幸せなのか分かりません。」