彩世自身はその味を確認したことがないのを、シマッタナと思った。
 
咲におかしな味だと気付かれるかもしれなかった。
 
彩世はカウンターにおいてある瓶を掴み寄せた。

中の丸い茶色の砂糖を数個、咲に何も聞かずに勝手にカップに放り込んだ。
 
瓶を戻す手を不思議そうに眺めていた咲に、彩世は笑った。

「これ、兄貴のキープボトルなんだ」

「キープボトル?」

「そう。この砂糖の味が好きなんだって。

ここにきて紅茶やコーヒーを飲むとき、必ずこれを瓶から出してかじってるよ」

「かじる、の?」

「そう。かじる。大量にガリガリかじっておいて、お茶で流し込む。

変な飲み方だろう?」