白い鼓動灰色の微熱

すっかりその存在を忘れていたのに、マンションの外に豊がいた。

通り過ぎようとして、腕をつかまれて、心臓が凍り付くように驚いた。

一瞬、悲鳴をあげたらしい。

「叫ぶなよ。全くなんて扱いだ」

この前までは自分に気のあるそぶりを見せていた咲の変化に、まだ戸惑っているらしい。

「用事あるんなら乗せてってやるよ。車だから」

言って、交通量の多い道路の脇に止めた、自慢の愛車を見やった。
 
ほかの子ならこの手で食いつくかもしれないが、咲は車に興味が無いので、無駄だった。

車なんて、新しくて、走ればよい。

咲はそういうタイプだ。