同じ綺麗な顔をした二人が、一人は子供のように泣きじゃくりながら、もう一人はそれをなだめるように抱きしめているのだ。

 そして、湯船の中には、人形のように可愛らしい女の子が、朦朧と目を開けて起き上がっていた。

「大丈夫だよ。もうお父さんはいないから。お前には言わなかったけど、去年、亡くなってたんだ」

 彩世の目から、ボロボロと零れ落ちていた涙が止まった。

 最後の一滴が、ゆっくりと整った頬を撫でて落ちた。

「本当?」

「ああ」

「じゃあ、もうお父さんはボクに命令しない?」

「しないよ」

 彩世はほっとした顔をすると、そのまま脱力し、気を失った。