白い鼓動灰色の微熱

右手には、アイスピックを持ったままだった。

 振り上げて、目一杯その切っ先を付き立てればいいだけだ。

 右手がスッと動いた。

 彼女の頚椎を狙うために、振り上げた。

 彩世は必死で自分の体を止めようとした。

 振り下ろそうとする力と、それを止めようとする力がぶつかり合って、腕がワナワナと大きく震えた。

「やめて!やめて!やめて!」

 力の均衡が崩れた。

 彩世の右腕は振り下ろされた。

 カツンと音がして、湯船の底に穴があいた。



 だけどそれは、清香を傷付けなかったわけじゃなかった。

首を切っ先がかすめたらしく、血が流れ出した。