そう思ったのは甘かった。

彩世の足は寝室のクローゼットの中の隠し階段に向かっていた。

出入り口の上に、雑誌の束が置かれてあるのを見て、彩世の口から“ちっ”という音が漏れた。

乱暴に、雑誌をクローゼットからつかみ出し、放りのけると、現われた出入り口を開いて、下に下りた。

自分がどこへ行くのか、彩世はやっとわかった。

地下室の引き出しにしまったアイスピックのところへ行こうとしているのだ。

ああ。

何であの時、捨ててしまわなかったんだろう。

鍵なんかかけたって無駄だった。

自分は鍵のありかを知っている。