白い鼓動灰色の微熱

動くまいと抵抗しているのに、体か勝手に、キッチンの方へ行こうとする。

その葛藤が体をガタガタと大きく振るわせた。

『行きなさい』
 
けれど、抵抗する力は、行こうとする力の前には無力だった。
 
彩世はカウンターキッチンの向こう側に回りこむと、紅茶を入れた。
 
そして、引き出しからハルシオンを取り出すと、乳鉢に入れてすりつぶした。
 
それを紅茶にいれ、甘く砂糖で味をつけて、よく混ぜた。

「びっくりしちゃった。彩人って、すごい綺麗にしてるじゃない」

清香がリビングに入ってきて、紅茶を混ぜる彩世の手は、瞬間止まった。
 
顔を上げて清香を見る。
 
嬉しそうな顔で、カウンターのほうへ近づいてくる。
 
ああ。
 
もう少し早く来てくれてたら、ハルシオンを入れるところを見られないために、入れなくて済んだのに。