白い鼓動灰色の微熱

二人に反応したセンサーが、玄関をオレンジ色の照明で照らしていた。
 
今、二人が脱ぐ靴以外何もない靴置き場を上がると、大理石張りの六畳ほどの吹き抜けの玄関がある。
 
まだ夕方の早い時間の日の明りを、天窓からも落としている。
 
清香は脱いだ靴を丁寧にそろえて置き直すと、彩世についてきた。

「二階の右手の部屋だよ。見ておいで。オレはリビングで待ってる」

清香は頷くと、階段を上がって行った。
 
その姿を見届けると、彩世はリビングのほうへ歩いて行った。

「紅茶でもいれよう」
 
呟いて、心臓がばくっと波打った。

「駄目だ」
 
彩世は呟いた。

「だって、清香はそんなために連れてきたんじゃない」

彩世は耳を押さえた。
 それでも、父の声が、振ってきた。

『殺しなさい』

「嫌だ」
 
彩世は震えだした。