白い鼓動灰色の微熱

でも、彩人さえ傍にいてくれたら、誰も殺さずにすんだかもしれない。
 
彩人が邪魔で、殺せなかったはずだ。
 
少なくとも、彩人に嗅ぎつけられる危険を冒してまで、誰かを殺したりしなかったに違いない。
 
清香を門の外に残したまま、玄関のドアの前まで来た。
 
内装や玄関の扉は少し前、まだ父が家にいるときにリフォームしたので地下室以外は新しい造りなのだ。
 
ドアノブの上下に二つ付けられたロックを外し、ドアを開けると、引きあけたまま、じっと清香が来るのを待った。

「あ、ごめんなさい」

それに気付くと、清香は慌ててやってきた。

「いいよ。彩人が生まれ育った家。堪能して」

清香は笑って、彩世が開けたドアの隙間から、中に入った。

習慣的にドアにロックをし、彩世は自分も中に入った。

「綺っ麗。広っろいっ」

清香の唇から言葉が漏れた。