「あ、来た。こっちこっち!!」
 
清香が手を振っているのが見えた。
 
大丈夫、家を見せるだけだから。

彩世は自分に言い聞かせた。 

彩人が歌いだす前にライブハウスについていればいいんだ。

彩世は清香に向かってニッコリ微笑んだ。

「微妙に違うのよね、彩世君と彩人って。あたし、もう見分けが付くわ」
 
言って、クスクス笑ってる。

「同じ鋳型で顔を作ったとするじゃない。初めに造ったのは彩世君で、丁寧に作られたの。そしたら、生まれるまでに時間が亡くなっちゃって、彩人を大急ぎで鋳型に流し込んだの。綺麗に形取る前に、彩人は鋳型を出されて生まれてきちゃったのね」