白い鼓動灰色の微熱

彩世の方は、彩人が歌っているだけで、血が騒いで、誰かを殺めたくなっているのだ。

その、誰かを手にかけている瞬間、彩人が何にも感じないわけがないのだ。

きっと、何か感じていたはずだ。

それで今日、事件のことを聞いて、彩人は彩世の周りで何が起こっているのかを悟ったに違いなかった。


彩人はホッとした気分になった。
 
これで、解き放たれる。
 
そう思って、一体何から解き放たれようとしているのかと考えた。
 
自分の行為を、止めるのは、自分自身じゃないのか?
 
ふいに、清香を見ている自分の目が、妖しく輝いているのを感じた。
 
ちょっとまて。

何で清香をそんな目で?


『もちろん、理想の指を手に入れるため、だろ?』
 

はっきりと、父の声が言った。
 
あんまりリアルなので、父が傍にいるのかと思って、辺りを見回した。