彩世は、ぐったりした体を、自分の肩から、床に横たえた。
 
野上冴子。
 
彩世のいるネイルサロンに頻繁に来る客だ。
 
前から、映画でも何でもいい。

一度でいいから付き合ってと、ひつこくせがまれていたのだ。
 
だからいっそ、ここに呼んでやった。
 
彩人が歌うと血がたぎる。
 
誰かを殺さないといられないようになってしまった。
 
誰か助けて。
 
理性の中で、ほんの小さな声で、彩世の声がする。
 
もう、殺したくなんかない。
 
誰か止めて。