白い鼓動灰色の微熱

次の瞬間には、清水の手を借りて、自分がしっかりと自分の足で立つところを意識した。

「ショックでしたか?」
 
彩世の顔は、異常な心拍数とは裏腹に、真っ蒼だった。

「ええ、まあ。知ってる人が殺されることなんて初めてですから。普通そうですよね。いや、そんな経験は一生の間にでもしないのが普通ですか」

彩人はまだパニクっていることを、どうでもいいことを喋っていることで自覚した。

「そうですね」
 
清水はそれでも相槌をうってくれた。
 
彩人には自分がなぜこんなにパニックに陥っているのか分からなかった。
 
確かに見覚えのある、しかもグリュックのファンらしき人物が二人も殺されたのだ。

ショックを受けない方がおかしい。

でも、今の彩人のショックの受け方は異様だ。

それを彩人は自分でも感じた。