白い鼓動灰色の微熱

自分への中傷が書かれてあると立ち直るのに時間がかかるため、彩人は、お客から集めたアンケートを読まないようにしていたのだ。
　
傷つきやすい自分自身を守るための、仕方のない裏切りである。

「もう一人の方も、うちのお客だ。何度か見たことがある。でも、この二人がどうかしたんですか？」
　
自分の身に覚えのないことなのに、訊いているうちに彩人の心臓は早く強く打ち始めた。
　
なぜか、彩世の顔が脳裏にちらつく。

「殺されたんです」
　
彩人の心臓はその言葉に耐えきれずに、体からはみ出してしまいそうに弾んだ。

大量の血が頭に送られて、彩人はくらくらした。

なぜかそうしないといけないような気になって立ち上がりかけ、ふらついて、誰かに体を支えられた。

一瞬、気を失っていたかもしれなかった。

その一瞬の記憶がとんだ。