白い鼓動灰色の微熱

スーツの内ポケットから黒い手帳を出すと、それを開いて、自分の身分を証明した。

「警察だ」

そこには大塚と書かれていた。

「こちらも警察の人間だ。プロファイラーらしい」
 
大塚刑事が胡散臭そうに紹介した。

「清水です。今日はうかがいたいことがあって来ました」
 
だったら、練習が終わってからにして欲しい。
 
メンバーの脳裏を同じ考えがよぎった。
 
それとも、無駄にすることになる時間分のスタジオ代を、警察は変わりに払ってくれるのだろうか。
 
それに何より、みんながスケジュールをあわせて作り出した、大事な時間なのに。

彩人は少し不機嫌になった。
 
自分の思いどうりにならないことが、昔から、嫌いなのだ。