すぐに入ってこようとした、長身の人物はもう一枚のドアに阻まれて、驚いたように立ちすくんだ。
 
スタジオは防音のために二重扉になっているのだ。
 
長身は気を取り直すと、もう一枚のドアを開けて、中に入ってきた。

「ちょっとお話伺えませんか?」
 
彩人の中に嫌な予感がよぎった。
 
この微熱や彩世に関係のあることじゃなければいいけど。
 
思いながら、なるべく自分の存在を隠したくて、ドラムを置いた一段高い床に腰を下ろした。

「安西京子と神谷咲。この二人を知ってるか?」

声はそこにいるみんなに問いかけていたが、長身の目は彩人に向けられていた。

「あんた誰?」

宮田が不機嫌に聞くと、もう一人、が体がいいというよりは少し肥満気味の中年のオヤジが入ってきた。