そんな俺を見ながら父である親父は笑っていた。



さっきまでの威厳はどこにいったことやら。



「優斗、よくやったな。」



滅多に褒めない父の言葉。



「…どうも。」



「行くんだろ?」



そう言って渡されたパスポート。



「自家用は後で私と母さんが乗っていくから、ファーストクラスをとっといた。」



「サンキュー。」



そう立ち上がるとドアに手をかけた。



「最後にかっこよくしめろ。」



父の声を聞きながら部屋を出る。



荷物は用意させていたからほぼ身一つ。玄関を出るとすでに車が俺を待っていた。



「どうぞ。」



運転手の開けた車に乗り込む。



俺が座ったのを確認するとゆっくりと車が走りだした。



窓から空を見ると、曇ひとつない晴天。



百合亜、今迎えに行くから…。




そう空に呟いた。










…………………………… 【完】