会場を後にすると

私はゆっくり歩き出した


まずは落ち着こう

今日の私は感情のコントロールが全く出来ていない



夜空に浮かぶ美しい星を見上げる

今日見た彼のいろいろな表情が

浮かんでは消えた



「ディー!」


呼ばれて振り向くと

マットが大きな身体を揺らして走って来た


「彼がキミを探している」


「…帰った、とお伝えくださらない?」

どんな顔をして戻れというのか


「慣れない靴を履いて、足がとても痛むの」

本当のことだ


「ディー…」

彼の命令は絶対なのだろう

私はマットを困らせている


「…私が戻らないと、あなたを困らせてしまうわね」


諦めて戻るしかないだろう


またあの光景を見なければならないのか

ディーヴァと彼の‥


泣いてしまいそうになった


今日はどうしても感情が安定しない

私はマットに背を向けた


「ディー?」

マットが私の肩に手を置いた


次の瞬間

マットの大きな身体に

すっぽり抱きすくめられた