ふいに

電話のベルが鳴った


高い音が寝不足の頭に響く

誰だろうこんな時間に


「ハロゥ、どなた?」


「…」

返答がない

いたずら電話だろうか


「切るわよ」

受話器を置こうとした


「ディー、僕だよ」


この声は


「おはよう。‥って言っても僕はまだ寝てないんだ。さっき最後のゲストが帰ったばかりで」


やはり彼だ


「そう。あなたが楽しい時間を過ごせたのならいいのだけど」

彼にまだ”おめでとう”を言っていないことを思い出した


「ディーが僕と踊ってくれていたら、きっともっと楽しかったよ」

急に姿を消した私をなじっているのだ


「何も言わずに帰ってごめんなさい。ちょっと足が痛んで・・」

言い訳がましいが嘘は言っていない


「その痛む足でずいぶんと早く帰ったんだね。すぐに追いかけさせたけど見つからなかった」


「…」


「ありがとう」


「え?」


「写真集。すごく気に入ったよ。僕の夢はいつか月に行くこと、宇宙の神秘に触れることなんだ。またその夢が広がったよ」


「喜んでもらえてよかったわ。今さらだけど‥お誕生日おめでとう」


「ありがとう。すっごく大きくて綺麗なバースデーケーキをシェフが用意してくれたんだ。ディーにも見せたかった」


「まぁ、私も見たかったわ」



「僕が1番にディーをダンスに誘うつもりだった」


「あ‥」

やはり彼は見ていたのだ