そんなことを言うと,
隆司はあたしの
手を引っ張った。
「…え?」
「あんね,男ってのは
少しぐらいワガママなほうが
いいって思うの!
"少し"だからね」
そう言いながら,
隆司はたった700円を
レジに捨てるように置いて
喫茶店を飛び出した。
そして,近くの
カラオケ店へ入った。
「いらっしゃいませ」
店員さんの声が響く。
紙に,
"秋晴勝也 18歳"と
書いていた。
「何時間のご利用で?」
「3時間で」
「ワンドリンク制となりますので,
お好きなお飲み物を」
「ジンジャーエールと…
ウーロン茶」
隆司はスラスラ答えていった。
「本店は……あっ!?」
隆司は,カウンターに乗せられた
マイクやらなんやらが
入ってるカゴを取って,
エレベーターへ向かった。
「分かってっから」
なんて投げやり…。

