幸せ物語 KANON



「えっ! 隆司…!?
んぐっ…」


「外での俺の名前は,
『カツヤ』。OK?」


そっか,名前で呼んじゃ
分かっちゃうもんね。


「カツヤね,了解ッ」


「堂々としてれば
気付かれないもんだよ」


隆司のそのときの姿は
ものすごく心強かった。

歩いてる最中,
「秋晴くん,
いなくなっちゃった」
なんて声がしても,
隆司は戸惑いを見せなかった。


「はあ――! 緊張したっ」


「あのスリルがたまんないね」


あたしたちは,
喫茶店でたくさん話したあと,
このあとどうするか
話していた。


「あたし…カツヤとカラオケ
行きたいっ。
M・Bの曲,唄ってほしいの!」


「……」


だめ…だよね。

あたし,ホントばか。


隆司があたしみたいな凡人,
本気にするはずないんでしょ!?


「あーもう!
あたしってなんでこんなに
ワガママなんだろっ!
カツヤ,別にいいからね?」