幸せ物語 KANON




あたしはただの
たくさんいるFANの
なかのひとりなのに…。


あたしは,隆司を
恋愛対象にみてる。


ずっと,この声を
聴いていたい。


ずっと,この部屋に
ふたりでいたい。



「うーん,唄った!」


「りゅ,カツヤは
やっぱり上手いね」


「そりゃあ。
そうじゃなきゃ,
あの世界でやってけ
ないもんなあー」


"あの世界"…
芸能界のことだよね。

そうだ,隆司は
芸能界で生きてるんだ…。


芸能界には,
キレイなひとがいっぱいいる。

魅了的なひとだっている。


あたしなんて……
足元にも及ばないひと
ばかりなんだ。


「じゃっ」


「ん,またメールすんな」


花音のからだから,
ちからが抜けた。


あーあ…
そう考えたら,あたし
バカらしいな。

あたしだけドキドキして
あたしだけ楽しんで…
あたしだけ――。



隆司は毎日のように
メールをくれた。


『おはよ。
俺はいまから仕事~
ねみぃ…』


とか,単純なメールだったけど,
メールが来ない日はなんか
さみしかったし,
来れば嬉しかった。