光のない暗い瞳が藍を見下ろす。
しかしそこに、見えている、という視覚は感じられず、逆に藍自身も、見られている、という人の視線独特の緊張が伝わってこなかった。
瞬間、息を呑んだ。
微動だにしない左目の隣で、右目の眼球が不吉に動いたのだ。そしてそのまま一つの視線は藍の手へと注がれる。
攻撃的に伊達眼鏡を奪い取られてからも、しばらく藍は放心状態のまま動くことが出来なかった。
目の前で、居心地の悪そうな顔をしている幼なじみの横顔は、よく見えなかった。急に、どうしようもなく、視界がぼやけはじめたのだ。
喉の奥が震えて、目頭が熱くなって、胸のあたりが締め付けられるように痛くて、苦しくて、気づいたら、頬が濡れていた。
拭うことも出来ず、覆うことも出来ず、ただただ止めどなく溢れる涙の流れるまま泣き続けていると、ふと藍を見下ろした行生はぎょっとして、
「なっ、なんで泣いてんだよ!」
急におろおろしはじめた。

