何事だと首をめぐらせるとどうやら違反速度でバイクが突っ走ってきたらしい。滅多に車が通らないとはいえ、あれだけスピードを出せばいつか事故を起こすな、と藍は思った。

「ありがと行生。―――あれ」
「どうした」
「行生、それ……」

 藍は条件反射のように手を伸ばし、身を引く行生からさっと眼鏡を奪い取った。とっさのことに反応しきれなかった行生は、なぜか片目を隠しながら藍の手に握られたそれを取り返そうと必死に手を伸ばす。

 行生を無視してレンズを目に近づけ、やっぱり、と藍は思った。

「これ、サングラス」
「オシャレだろオシャレ」
「さっき視力が落ちたからって……―――行生、まさか」
「やっ、やめろ!」

 悲鳴のように叫んだ行生の手を掴み、藍は隠されていた彼の目を問答無用で露わにした。