大きな鞄を肩にかけ、にっと笑う立ち恰好は高校生の頃とちっとも変わってない。すこし痩せたかな、とは思うけれどそれはたぶん、締まったという意味だろう。
 凛々しい目つきも眉の形もそのままだし、自慢の鼻は相変わらず憎たらしいくらい高く、すっとしたアゴは無駄な肉が落ちていっそう線をはっきりさせた。

 行生は、変わってはいなかった。

 ただ、
 見慣れぬ眼鏡が彼の持ち味である"ありのままの良さ"に余計さを加えている以外は―――。

「おかえり。早かったね。言ってくれれば港、迎えに行ったのに」
「予定より早くなったんでビックリさせてやろうと思ってさ」
「そうなの。眼鏡、かけたんだね」
「ああ、向こういたらちょっと視力落ちちまってな」

 慣れないのか、直し方がなんとなくぎこちない。のぞき込もうと首を傾げると、ばっと顔を上げられて驚いた。

「なに」
「いや、なんでもねぇ」

 手を振って苦笑すると行生はまたぎこちなく眼鏡を上げた。