あれから、二年が経つ―――。


 ふと立ち止まったいま、ここに、彼の姿はない。
 高校を卒業すると同時に、兵役(へいえき)に服してしまった。
 手紙の一つ、寄越さないけれど、たぶん、無事だろうとは思う。
 体の丈夫さだけが取り柄の筋肉馬鹿だったから。


「―――藍(あい)」


 幻聴か、と思った。
 だって、まさか。まだ、帰ってくるには、早い。予定では、帰ってくるのは早くても一ヶ月先のはずだ。
 それでも気になって、恐る恐る振り返ってみると、


「行生(ゆきお)……」


 そこには過去の幼さが取り除かれた精悍な顔つきの青年が立っていた。