「その…モデルとの噂って……?」
それでもなんとか気になる部分を問い掛けると、フフンと得意げに笑ってみせた沙穂は、それはそれは丁寧に説明してくれた。
『アキ姉も見たでしょ?月島先輩。
あのスタイルにあの顔、当然の如くウチの学校の超有名人なんだよね、あの人。
で、ファンの子だって、星の数ほど居るわけ。
あ、もちろん私はスバル先輩命だけどね』
「へ、へぇぇ…」
『でもね、どんなに可愛い子がコクろうが、どんなに美人な先輩が言い寄ろうが、ことごとくフってんだって。
そこがまた硬派だって人気なんだけどねぇ…』
「ふ〜ん…」
………っつうか、前置き長ぇよ、沙穂。
肝心の噂について、いつまで経っても言い出さない沙穂に少々イラついていると、
『でね、その月島先輩にはある噂があってね…』
いきなり本題を切り出されて、私のノミのような心臓がドキッと跳ね上がった。
『たまに、ホントにたま〜に、モデルみたいな女の人が学校まで訪ねてくるんだって』
「……へ?ってことは…」
私のことじゃない……よね?
だって私がコータ君に学校で会ったのって、今日だけだもん。
沙穂が言ってるのは、今までの話らしいし。
その事実に、私は再びほっと胸を撫で下ろした。
だけど……
なぜだか、心の隅にはモヤモヤした感情が新たに沸き起こり始めていた。
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