パタン−−
……つ……疲れたぁぁぁ
私がドサッと倒れ込むと、長年愛用してるスプリングベッドが嫌な音を立てて軋んだ。
やっと午後の配達を終え、ただ今の時刻5時32分。
普段なら夕飯の用意をする母親の手伝いを、ぼちぼち始めてる時間だ。
基本、パンが売り切れたと同時に閉めるウチの店の閉店時間は、だいたい夕方の5時前。
それから父親は明日の準備を始め、母親は夕飯作りに勤しむ。
それは昔も今も変わらないスタイルなんだけど、私が高校を卒業してからは、手が空いてる時は花嫁修行を兼ねて夕飯作りを手伝うように言われた。
最初は嫌々だったものの、かれこれ7年近く花嫁修行をしてきて、最近では康信との一件で率先してするようになってたんだけど。
どうしても今日は出来ないと、さっき母親には断ってきた。
それはなぜかと言うと−−−
「そんな泣きそうな顔しないでよ、明さん。
すごく簡単なことだから」
「う、うん……」
私が下げていた頭を怖ず怖ず上げると、コータ君があの艶やかな笑みを浮かべて私に言った。
「バラされたくないなら、俺が卒業するまで、俺の言うことに全部従ってね?ってこと。
手始めに、今日仕事が終わったらウチに来てよ。この弁当、俺1人じゃ食べ切れないから」
それは世に言う絶対服従ってヤツなのでは……?
っつうか、全然簡単じゃねぇよぉぉお!!!
その要望?命令?に憤りを沸々と感じながらも、もちろん、私に拒否権なんてあるはずもなく。
「……はい、おっしゃる通りに……」
さっきまでちょっと舞い上がってた私の心は、この悪魔によってドン底まで突き落とされたのだった。
やっぱりクソガキはクソガキだぁぁぁあ!!!
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