「それって、どういう意味……?」






まさか私が配達に来るのがわかってたってこと……?






自慢じゃないけど、ウチのパン屋にはもう一人配達員が居て、私とその人で地域を分担して回っている。






だから配達してると言っても、必ず私が来るとは限らないわけ。
−−−と言っても、確率は1/2だけど。






私が食べる手を止めてコータ君の反応を伺っていると、やがてコータ君はその整った顔にニヤリと笑みを浮かべた。






「……それはね、前から俺が、明さんのことを知ってたってことだよ。
この前の夜に突然絡まれた時も、すぐに気づいたよ。
あ、学校に来てるパン屋のお姉さんだって」



「嘘っ…!?
私が学校の出入り業者って知ってて家に泊めたって言うの?」



「うん」






この信じられない事実に、私は軽い目眩に襲われた。






いくらこっちが知らなかったとはいえ、出入り業者が配達先の高校生をたぶらかした(実際は泊めてもらっただけだけど)なんて噂が回れば、たちまちウチのパン屋なんて出入禁止処分にされてしまう。
もっと言えば、今行ってる配達先全ての信用をも失うなんて最悪の事態に……






私は頭を抱えながら、まさに寝耳に水とはこのことだと思った。






「………でも大丈夫だから安心してよ。このことは誰にも話してないし、これからも言わないつもりだから」



「ホントにっ?」



「ただし、明さんが今から言うことを聞いてくれたらの話だけど……?」






この悪魔の囁きにも似た言葉に、私はすがるしかなかった。






「聞く、聞きます!
何でも言うこと聞くから、言い触らすことだけは止めて下さい。
お願いします!この通りです〜……」







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