「……ごめん、明……
結婚の話はなかったことにしてくれ……」
……なんなのこれ……相当質の悪い夢……?
見慣れたリビングの床に頭を付けて土下座する康信を、ぼんやりと見下ろす。
そしてなぜか康信の隣に同じように土下座している美佳さんとやらも。
2人とも、冗談もほどほどにしないとマジでキレるわよ?
「本当に悪い!!許してくれとは言わないから……」
「私からも謝ります…
でも、私達本当に愛し合ってるんです……」
愛し…合ってる……?
泣きながら訴えてくる言葉に、ひどくカチンとくる。
「じゃあ、なに?
あたしと康信は愛し合ってないとでも……?」
「いえ、違います……
確かにお2人は愛し合ってらっしゃったと思います。でも今は……」
あたしと康信は、“る”じゃなくて“た”なの?
なんなのこの女!!!
一気に込み上げてきた怒りに任せて、私は右手を振り上げた。
でもそんな私を止めたのは、
「止めろっ!美佳のお腹には……!」
そう叫びながら、うずくまる小さな体に覆いかぶさる愛しい人の姿だった。
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