よりによって“シングルベッド”って……
どんだけ失恋に酔いしれてたんだよ、昨日の私は……
『もしもし?明ちゃん?』
「…ふはははは…」
返事をしようにも、開けば私の口からはもう自嘲的な笑いしか出てこなくて。
そんな私を心配そうに和人君は呼び続けてくれてたんだけど。
『……実は、タクシーに乗る時にもちょっとしたサプライズ的なことがあったんだ』
しばらくして私が大人しくなると、そうやんわりと教えてくれた。
「ははっ… 今度はなんですか〜?
一人でリサイタルでもやっちゃいました〜?」
もうここまで来たら、何でも来ーい!だよ。
『そうじゃないけど……』
「じゃあ、踊っちゃったとか?
あ、一人ファッションショーしちゃったとか?」
『ううん、タクシーに乗せようとしたらね、明ちゃん、走って逃げちゃったんだよ』
「はい???」
逃げた?
って誰が?
あ、私か……
うわ〜、迷惑な女。
『一応すぐに追い掛けたんだけどね、かなり逃げ足が速くて。
しかも“私だけの王子様を探しに行くんだから来ないで!”って叫ばれちゃって…
ごめんね?連れて帰れなくて……』
そう言って和人君は何度も電話口で謝っている。
いやいや、アナタには全く落ち度はありませんよ。
あるとしたら……
かなーりイタい、昨日の私じゃね?
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