『昨日? もしかして明ちゃんも記憶ないのかな?』
“も”ってことは、香奈もないんだな……
そう思いつつも、そこはあえて追求せずに返事をした。
「はい、実はそうなんです」
じゃないと、和人君は一旦香奈の話になると、止まらない人だから。
『そっか、そっか。
じゃあ、どこらへんまで記憶ある?』
そう言われると、ほとほと弱り果ててしまう。
飲み会中の自分の記憶ほど頼りないものはないのだから。
それでもなんとか記憶を呼び起こそうと頭をフル回転させた。
確かあの店って芋焼酎の種類が豊富で、毎回悩んでたよな……
ああ、そうだ、
「“朝日”をロックで頼んだあたりです。
だから……3杯目ぐらいかな」
うん、そうそう。
“明るい農村”と“朝日”で悩んだあたりからいまいち記憶にないもん。
私が自分の記憶に確信を持って頷いていると、
『3杯目か… じゃあ、大声で歌ってたの覚えてる?』
「はっ??」
和人君は私が全く身に覚えがないことを話し出した。
『ほら、隣のテーブルに居たサラリーマンと意気投合しちゃってさ、明ちゃん一緒に歌ってたじゃん、“シングルベッド”』
「………」
うっそーーん!!
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