電話相手に酸欠ってどうよ……
私がハァハァ息を切らしている間に、電話の向こうでは勝手に選手交代していたようで、
『おーい、もしも〜し』
今度はこの状況にはそぐわない、ちょっと間延びした声が受話器から漏れてくる。
……ったく、勝手に話が逸れる奴の次は、コイツかよ……
その声の主は、もちろん香奈の婚約者の和人君で。
今年晴れて三十路に到達する彼は、行動・言動全てが落ち着いていて、
『あれれ?香奈、俺ヘンなボタン押したみたい。
なんかハァハァ聞こえるんだけど……』
………いや、ちょっと天然が入ってて、話してるコッチが拍子抜けさせられるという、ある意味凄技の持ち主だったりする。
「もしもし?」
『あ…、聞こえた』
はぁぁ、相変わらずの天然ぶりだこと。
よくそれで営業マンが務まりますね?
「ちゃんと聞こえてますから、出来れば昨日のこと教えてくれます?」
私は半ばやけになりながら続きを促した。
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