「考えてもみなさいよ。ウチのクラスだけで、一体何人の子が、日吉君のこと好きだと思っているのよ。」

私の肩に腕を回した若菜ちゃんが、耳元で囁く。

「さあ?」

「8人よ。8人。」

「ハチ?」

「そうよ。クラスの女子が、15人だからその内8人ていえば、」

「ひょ〜。半分以上だね。」

「そうよ。ウチの学校は、4クラスあるから、」

「P学園の入試の倍率よりずっと高いわ。」

私立を受験するつもりの由加里ちゃんらしい比較の仕方である。

「骨肉の争いだねえ。」

かわいい外見の似合わず、オヤジな由美ちゃんは、ビーフジャーキーを食いちぎりながら、楽しそうに言った。

「そう。愛の戦争よ。」

芝居がかった様子で言い切る若菜ちゃんは、面白いけれど、少女漫画の読みすぎである。

しかも、昔のお母さん世代のやつ。

「じゃあ、私は、永世中立国で。」

いつになったら、他の話題になるのだろうか。

昨日のドラマ見逃したから、誰かにストーリー話してもらおうと思ってたのに。

「「「だめに決まってるでしょ。」」」

またしても、怒鳴られた。

「そんなのらくらしていて、人生楽しいわけないでしょう。」

ちょっと、断言しないでよ。

「かわいい子が、勝つなんて面白くないじゃない。」

どうせ、私は、ブーですよ。

「恋する花ちゃん、楽しみ!」

・・・無責任な。

「でもさ、皆は、どうして、私が、一平ちゃんを好きだって思うの?そう見える?」

素朴な疑問をぶつけてみたら、三人とも一瞬黙ってしまった。

「てか、日吉君の方が、花ちゃんのことを好きなんだよね。」

「頭は良いはずなのに行動が、単純だからね。」

「分かりやすくて、かわいいよね。」

三人の言葉に頭を捻る。

一平ちゃんが、私のこと好き?

普通にそりゃないでしょ。

そういえば、一平ちゃんは、遠くの私立の中学に行くってお母さんも言ってたし、あと半年もすれば、顔も見なくなっちゃうんだよなあ。

口きかないって決めてたけど、やっぱりやめた。

お別れまでもう少しだもんね。

・・・別に好きだからとか聞いたからじゃないよ。