おいおい、若菜ちゃん。

理由が分からないのにどうして好きだと分かるの。

若菜ちゃんは、少しムキになったように答えた。

「好みも話題も合わないけど、一緒にいたいと思うの。そういうのって、好きってことじゃないの?」

「でも、前田君て、性格悪いよ。」

「私は、あんまり気にならないから、それでいいの。」

若菜ちゃんは、きっぱりと言い切った。

うらやましいな。

いつも物事の優先順位を自分の中で決めているから。

「前田君といたいから、S女受けるのやめたの?」

「まあね。」

「若菜ちゃんのお母さん、すごく怒っているって聞いたけど、大丈夫なの?」

「大丈夫じゃないよ。昨日も夜中まで大ゲンカ。」

「私ももったいない気がするけど。若菜ちゃん、賢いし。」

正直な感想を述べると、若菜ちゃんは、すねた顔になった。

「いいの。高校は、国立附属に入るから。」

「それなら、いいか。」

妙に納得したので、頷くと、若菜ちゃんは、笑った。

「花って、変な子だよね。あんたといい、貴巳君といい、私の好きな人間は、変なのばっかり。」

「分かっているなら、やめれば。」

忠告してみると、ほっぺを掴まれた。

「いひゃいよ。」

「目を覚ましてあげてるの。マイペースもたいがいにしなさいよ。日吉君が、私立受験しないって言い出したの知ってる?」

え?

「ひ、ひりゃない。」

「昨日、職員室で聞いちゃったのよ。」

「一平ちゃん、勉強しすぎて、頭沸いちゃったのかな。」

「・・・・あんた、その言葉、日吉君に言っちゃだめだからね。」

若菜ちゃんは、憐れむような目で私を見た。