「前田君だって、若菜ちゃんに時々冷たいじゃん。」

前田君の体に一本も神経が通っていないと感じる時もある。

「俺のは、ツンデレだから。」

「・・・ごめん。寒いんだけど。」

「窓側だからな。」

前田君は、至極真っ当な返答をした。

彼は、真剣らしい。

それが、ゲームであっても、私との会話であっても。

空気を読む気は、全くない様だが。

そっちがその気なら、徹底的に攻撃してやる。

「ツ、ツンデレとか自分で言ってて恥ずかしくないの?」

使い慣れない言葉だから、どもってしまったじゃないか。

「・・・・」

「言い返さないの?」

前田君は、沈黙を守っている。

都合が悪くなるだんまりなんて、オタクのお手本みたいな奴だな。

「黙ってちゃ分からないじゃん。」

一瞬、前田君の目が、鋭く光った気がした。

いや、光ったのは、ゲーム機の画面かな。

「気分が悪くなるようなことを言われたから、もう話したくないと思っただけ。」

ぼそりと聞こえた前田君の言葉は、核心を突いていた。

急に恥ずかしくなった。

私は、意地悪だ。

「ごめん。失礼なことを言って。」

前田君が、顔を上げた。

メガネの奥の目が笑っている。