「一平ちゃんは、私のことが好きらしい。」

「そんなの誰でも知ってるよ。」

私の突然の宣言を聞いた前田君は、つまらなそうに突っ込みを入れた。

隣の席に座っている前田君は、算数の授業中なのにゲームをしている。

机の下のPSPから発せられる人工的な青い光が、メガネに映っている。

相変わらず、暗い奴だな。

小学生から、これじゃあ、日本の未来は、お先真っ暗だ。

大体、前田君は、知ったかぶりをしている。

若菜ちゃんの話を聞くまで、一平ちゃんの顔すら知らなかったくせに。

「一平ちゃんて、短気な上に寂しがり屋なの。」

前田君は、何も言わない。

ゲームに熱中しているのだろう。

「だから、私が避けたら、怒ったみたい。怖いのなんのって。般若っていうのかな。」

「般若は、鬼女の面だよ。」

前田君は、訂正をした。

やっぱり聞いてたんじゃん。

「じゃあ、鬼みたいだった。」

「俺から見たら、小糸の方が鬼だと思うけど。」

「どうして?」

「好きな人に避けられるとか最悪だろ。自覚してるなら、なおさら鬼。」

乙女に向かって、鬼とはなんだ。

大体、前田君と異性の話をしていても、恋バナっぽくないのは、前田君のキャラクターのせいか。

くどくはないけれど、ちょっぱすぎる。