「花ちゃん!」

お化け屋敷を出ると、待ち構えていた由美ちゃんに抱きつかれた。

「心配したよ。それもこれも石川君が、頼りないせいだからね。」

由美ちゃんは、私に抱きついたまま、石川君をじろりと睨んだ。

落ち込んでいる石川君を見るにどうやら、作戦は、失敗らしい。

「ごめん、小糸ちゃん。俺、小糸ちゃんが、お化けが苦手だったって知らなくて。」

飼い主に叱られた子犬のような顔で石川君は、私に謝った。

「ちゃんと、話しておかなかった私が、悪かったんだよ。由美ちゃんもごめんね。心配させて。」

そう言って、由美ちゃんの柔らかい髪に顔を埋めた。

「花ちゃんが、無事ならいいんだ。それから、石川君が、反省を態度で示してくれるそうです。」

いきなり、機嫌が良くなった由美ちゃんは、石川君に目配せした。

「ソフトクリームをおごらせていただきます。」

もう既に二人で話し合っていたようで石川君は、間髪入れずに言う。

それでも、仲良く売店にソフトクリームを買い行く二人の後姿を見て、ある意味作戦は成功したのかかもしれないと思った。

二人の姿が、見えなくなると、私は、一平ちゃんと向き合った。

「あのさ。一平ちゃんは、私のこと好き?」

その言葉は、思ったより、ずっと簡単にするりと私の口から出た。

それは、多分、なんとなく答えが、分かっていたからで。