「な、何?」

「立てないんだろう。乗れよ。おぶっていってやるから。」

そう言って、一平ちゃんは、首を傾けると、背中を示した。

「悪いから、いいよ。私、重いし。ちょっと休んだら、立てると思うから。」

慌てて首を振ると、一平ちゃんは、またしても呆れたように私を見た。

「そんなこと言ってたら、日が暮れるぞ。お前の班の奴らだって、心配してんだ。ちょっとは、人のことも考えろ。」

一平ちゃんの言葉も一理あるけど、そんなこと言ったってさ。

「重いのは、見れば分かるから今更だろ。それでも、運んでやるって言ってるんだから、素直に乗ったら?」

一平ちゃんは、小ばかにしたように鼻で笑った。

「ちょっと、何それ!乙女に言う言葉じゃないよ。デリカシーなさすぎ!」

「はいはい。ガタガタうるさいよ。」

私の抗議の言葉をハエを追っ払うようなそぶりで流した一平ちゃんは、立ち上がると、座っている私を持ち上げると、小脇に抱えた。

「ちょっと、何すんのよ!下ろして。」

「いつまでも不毛な争いしてても意味ないだろう。仕方ないじゃんか。」

一平ちゃんは、私を抱えたまま、ずんずん歩いていく。

「だからって、こんな荷物みたいに運ばなくたっていいじゃない。恥ずかしいから、やめてよ。」

「自分が、おんぶじゃ嫌だって言ったんだろ。」

「この方が、もっとやだ。」

一平ちゃんは、ため息をつくと、私を下ろした。