誰もいない屋上にストンと下ろされる。


「俺はお前だけやからっ!!!!」

キーン…


うるさいくらい大声で叫んだ啓。




分かってる…


そんなん、分かっとるわ。


「グスッ…。」


泣きたくないのに涙が溢れる。

こんな弱い女の子にはなりたないのに…。


「悲しませて…ごめんな。」

啓が力一杯私を抱き締めてくれる。


…違う…


謝るのは、私の方やのに…


私、告白をいつも聞かなかったふりして無理して笑っててん…。

啓に…


隠してた自分がおったから…


「ご…ごめんっ…。」


私は謝った。


「…え?んで謝って…?」

私が怒ってると思っていたのか、啓は安心したような声で…


でも、どことなく心配そうな声で聞いてきた。


「だっ…てっ……わた、私がっ…。」


「…美緒、落ち着け。」


背中をさすってくれる。

それはいつもの優しい手つきだった。


少しの間、啓の腕の中にいた私は、落ち着きを取り戻した。


「も…大丈夫やから…。」


「…。」

謝ったからには言わなあかんよな。



「啓の気持ちは私に向いてる…そんだけはちゃんと分かってるから…。」


「…ああ。」


「さっきの…本当は私、止めれてたかもしれへんねん。…啓に嫌な思いさせる事もなかってん。」




でも、あの時、足が動かなかった。


「…?」





…誰だってさ

告白の時は一番伝えたい思いをぶつけるんやし、相手にはちゃんと聞いてもらいたいもんやと思うねん。

だから、私はいつも啓が呼び出される時は我慢して帰ってくるの待ってるねん。

それは、他人の気持ちまで拒否する権利なんか私にはないからや。