「美緒…何で…笑ってるの…?」







やっぱり…。

奈々は私の腕を引っ張って言う。

「ちょっと啓!?」


「あ……。」


啓も私を見て動けないみたい…。



何で…?

私…?


私は自分が今何を思ってるのかわからないくらい混乱していた。


「…。」


私は走って教室に戻った。
「美緒っ!!」

啓と奈々が私の名前を呼んでくれてたのは、ちゃんと聞こえた。


1人教室に戻って、黙って机に突っ伏した。

「美緒ちゃん…どうしたん?」



さっ君が心配そうに声をかけてくれる。


でも返事もうなずくことも出来なかった。


すると…



「おい!啓が1年とキスしてたぞ!!」


私がいると知らず、言いに来たクラスメート。


プツン…


それを聞いた瞬間、実感が湧いてきて、涙が溢れた。

悲しくて…

胸が痛くて…


ただただ…泣いた。


「…え?」


さっ君も驚いて声が出ないみたい。


周りのみんなは教室の隅にいる私に気づかずに、ぞろぞろと廊下に顔を出した。


ただ、さっ君だけが

私の背中をさすってくれていた…。


こんなことでいちいちメソメソしてたら、アホらしいとは思うけど…


思い出せば思い出すほど

何も出来ず、見ていただけの自分のむなしさに


悲しくなる…。



「美緒っ!」


啓の声が教室に響いた。


「啓…。」


呟きながら、さっ君がうつ伏せたままの私の背中から手を離した。

「佐久間…どいて?」


「いややって言ったら…?」

「無理やり美緒だけ連れてく!」


ぐいっ!


私は啓に抱えられた。


な…。


「美緒…ちゃんと話聞いてや。」

耳元で言われる。


私は少しためらった後、頷いた。


きっと

このままやったら

私は啓を避けてしまうかもしれへんから…。





そのまま屋上まで連れていかれる。