私はその場から逃げようとしたんやけど、足が動かなかった。


すると啓にフラれた女の子が私の方に走ってきた。

廊下を曲がって私を見つけたその子は立ち止まって私をキッと睨んできた。



「…見てたの?」


「い、いや…そういう訳じゃ…。」


どうしよう…!

めちゃくちゃ怒ってる!!


「何でよ!何であたしじゃなくてあんたなの!?」


ひゃっ…怖すぎ!!


「あれだけあんたがいない放課後もアピールしたのに!!」


ヒュッ…



うわっ!!

ぶたれる!!??!




パシッ




!!!?


「何してんねん。お前、ふざけんなよ?」



…啓。


よかった…。



啓に睨まれた女の子は走って行ってしまった。


「はぁ…美緒。」


啓はため息をついてから優しく私の名前を呼んだ。


私は何故か恥ずかしかった。

何でか分からへんけど、顔が熱くなってるのが分かる。



「行くで。英二たち待ってるんやろ?」



なんかモヤモヤする…。

啓はずっとあの子にアピールされてたん?

それを困ってたん?

なら、何で私に言ってくれんかったん?

今だって何で話に触れようとせぇへんの?



次から次へと疑問がわいてくる。

こんなんじゃきりがないのは分かってるけど…。



「…うん。」



それでも私はやっとのことで言葉を飲んだ。

啓に当たってしまいそうになったから。



啓に手を引かれ、私たちは奈々と英二が待つ場所へ戻った。