その間も考えるのは啓の事ばかり。

「はぁ…毎日こんなんじゃ心臓もたへんわ。」


でも、大切にされてるっていうのはいつも伝わってくる。


「何がもたへんねん。」

「え!?うわっ!!」


「あっ!!」

落としそうになった食器をすかさずキャッチした啓。

「びっくりしたやんか!来たなら来たって言うてや。」

「あは。わりぃわりぃ。」


冗談混じりで謝る啓。

なんだろ…今日はテンション高いな。



「なんか…変。」

「は?何がやねん。」

いただきますをしてパンにかぶりつく啓。


「テンション高い気がすんねんけど。」

「べっつに。なんもないで?」



…嘘や。
顔、にやけてるし。

「ほんまに?」

私が怪訝そうにうかがうと、啓がチラリと私を見る。

「お前、今朝…なんの夢見た?」


夢…?
んなの思い出せへんわ。


「…忘れた。」

「ふーん。お前な、今日寝言言ってたんやで。」

「は?うそやん!」

「嘘ちゃうて。」

「な…なんて言ってたん?私…。」


変な事言ってたらどうしよう。


「啓〜、ちゅうしてー。って言ってたで?」

ニヤニヤしながら笑う啓。


「ウチがそんなん言うわけ…!!」

「言うたわ、アホ。だからしたったやんけ。」


「したって…。」

もしかして…おでこにしたキスの事!?

私は思い出して顔がまた熱くなる。


「…バカ。」

「そう言う事なら喜んでしたるで?」

「もう!からかわんといて!!」


啓は笑いながらリビングのソファーに座り、テレビをつけた。

私はまだドキドキしている心臓を押さえながら、朝食の後片付けをしていた。


♪〜

突然、私の携帯の着信音が鳴る。
携帯の画面に表示されているのは奈々(ナナ)の名前。


「もしもーし。奈々どしたん?」

《美緒!あのね、旅行行く気ない?》


いきなりの『旅行』という単語にドキリとする。


「え…旅行?」

私が呟くとさっきまでテレビを見ていたはずの啓がふとこちらを見た。