私に恋を教えてくれてありがとう【下】

そう、このタイミング。

「お待たせいたしましたぁ~」


小豆色の頭巾を被った中年の女性が、二人分の蕎麦を軽々しく持ってきた。

「はい、俺穴子のほうです」

彼は応え、目の前の好物に目を輝かせ、華子は断る店員から自分の分のお盆を受け取り、どうもっと会釈をした。

華子は蕎麦をすすりながらも、時々彼の恥ずかしがっている姿をさがした。


でも期待をよそにした態度であった。


華子は貰った左耳のピアスを触り、ほてっているのを感じた。


どきどきしているのは私だけ?


そう彼のピアスに問いかけた。


一瞬、気持ちが一つに重なろうとしたと思ったのは気のせいなのか……。

何故だか彼の方から遠のけた気がした。


全てが負に向かう思考を、誰かに止めて欲しいと切に願った……。