私に恋を教えてくれてありがとう【下】

「佐藤?」

はっとした華子は、祐樹の姿を捕える為に、先ほど潜った暖簾に目をうつした。

「……あれ?どうしたの?
 トイレ?……じゃないか」


祐樹は華子の向かい席に腰を下ろし、フッと苦笑いし、視線を落として酷くしんみりとした声で言った。


「ごめんな。

 今、車見てきたんだけど、

 見つかんなかったわ」

きょとんとしている華子と目を合わせた。


「ピアス」


「……!!」


はっとした。

「だから……これ……」



祐樹はおもむろに自分の耳から光るものを、
華子へ差し出した。


「本当安いのだけど、取りあえず何かついている方が空虚な感じしないかなって思って。

それあげるからさ」


祐樹は照れも見せずに、優しく言った。


華子は厳かにそれを受け取り手の中を覗き見た。


……小さなきなり色のパール。


彼の耳にいつもついていた、見慣れたピアス。

華子はうっかり、やわらかくほころんだ。


「……気に入ってくれた?」


華子の表情を見て、彼は頬を赤らめた。


「あ……で、でも……悪いよ!

 いつもしてたやつでしょ?

 そんっ!もらえないよ!!」

華子はあたふたして上手く口が回らない。

貰いたくない?そんな訳がない。

確かにうららかな心地の良い風が
華子を包み込んでいる。

本当の自分はいっている。


“彼のものが欲しい”



華子は言葉とは裏腹に手の中にある彼のピアスを握りしめた。


そして祐樹は言った。


「俺の気持ちです」